研究紹介<戴 周杰(タイ シュウキ) 助教>

「映像制作」と「アートマネジメント」、両輪の研究

 私は、映像制作などを担う「作り手」と、映画祭や地域映像アーカイブの企画・運営を担う「支え手」という、二つの視点から研究に取り組んでいます。両方の視点から、映画がどのような枠組みで制作され、どのように観客のもとへ届けられ、そして社会にいかなる影響を与えてきたのかという一連のプロセスに触れることで、きっと新たな世界が開かれると信じています。

 家族の影響もあり、幼少期から映画を観ることが好きでした。大学時代には「映像制作」という専門領域を学び、演出・脚本・編集・撮影など、映像制作の現場でさまざまな分野に携わってきました。大学院在学中に制作した、日本人留学生とホストファミリーの人間模様を描いた作品が、海外の映画祭にノミネート。それをきっかけに、映像作家としての活動だけではなく、映画祭や映像文化の企画運営に対する関心を深めていきました。

東北が秘めるポテンシャルを信じて

 私はこれまで、東北地方における映画・映像分野の文化政策を重点的に調査してきました。特に山形市を拠点に開催するアジア最古のドキュメンタリー映画祭「山形国際ドキュメンタリー映画祭」を事例に、アートマネジメントの観点から地域映画祭の持続性を研究しています。

 東北地方は、少子高齢化、人口流出、生産活動の低下、過疎地の増加、中心市街地の衰退など数多くの社会課題を抱える「課題先進地域」と呼ばれています。一方で、伝統芸能や食文化など、豊富な文化資源が蓄積されている地域でもあります。本学が位置する青森県にも、全国的な認知度を持ち、高いレベルの活動を行う現代美術館が複数存在しており、文化芸術の面でポテンシャルが秘められていると感じています。

マネジメントのマインドが作り手を育てる

 所属している感性デザイン学部感性デザイン学科で担当している講義の一つに「企画構想演習」があります。今年度はその中でアートマネジメントコースを新設。地域の自主映画上映団体「白マドの灯」と連携し、同団体が主催する上映会に、学生を運営スタッフとして受け入れていただきました。学生たちは現場の実務家とともに、上映会プロジェクトの企画・運営の一連のプロセスを学びました。アーティストやクリエイターを志望する学生が多い中、観客側の目線からどのようなニーズに応えるのか、どのような内容を提供するのか、そしてどのような効果を生み出せるのかといった“逆の立場”からの学びは、大きな刺激になったと考えています。

地域社会で映像文化を守っていく

 大衆文化としての映画は、年齢・性別・国籍・人種を問わず、世界の共通言語として誰もが楽しむことができます。さまざまな文化や歴史、価値観、物事の捉え方に触れることができるため、自分の世界を広げてくれる重要な手段であると考えています。それらを単に鑑賞して終わるのではなく、「映像制作」と「アートマネジメント」の領域を往復して研究を進めることで、地域活性化や文化振興に寄与できると考えています。

 映像制作も映像文化のイベント企画・運営も、一人で完結できるものではありません。地域との連携を意識し、今後も美術・演劇・文学・音楽・舞踊・写真など幅広い芸術分野に好奇心を持ち、研究および教育活動に励んでまいります。