論文の審査結果の要旨
本研究は、鉱化変質岩が大量に分布する鉱山地域を通過するトンネル工事について、水や土壌の環境を損なうことなく施工するために、発生する鉱化ずりの特性と分別判定方法に関して詳細な研究を行なったものである。具体的には、複線断面としては世界最長の東北新幹線八甲田トンネルを対象に、施工前・中に実施した岩石・水質試験結果から、トンネルに分布する多様な岩種を対象として酸性化する岩石の特徴と溶出特性を明らかにした上で、酸性化の可能性の有無を短時間に事前判定して確実にずりを分別し、工事の進行を妨げることなくかつ経済的に処分する方法を開発・提案したものである。
第1章では、緒言として、研究の背景、八甲田トンネル酸性水問題の経緯、既往の事例と研究および本研究の目的を述べている。
第2章では、八甲田トンネルの概要として、工事概要、地質および鉱化作用分布についてまとめ、研究の基礎情報としている。
第3章では、トンネル計画段階における事前検討結果について述べている。鉱化変質岩からの溶出水の特性とずり処分方針を検討するため、モデル土捨場による長期暴露試験、地表からの短尺ボーリング試料による簡易溶出試験を実施した。その結果、硫黄含有量2%程度以上で酸性水の発生と重金属類の溶出が認められた。また、簡易溶出試験の溶出水pH値が酸性化の有無を判断する重要な指標となることを明らかにした。処分方法については、石灰石等による中和よりも、廃棄物処分技術を応用した管理型土捨場を採用する方が適当であると判断した。
第4章では、トンネル掘削初期段階での切羽試料を用い、分別基準とフローについて検討している。分別基準の確立へ向けて、簡易溶出試験による溶出水のpH・主要イオン濃度・重金属濃度の測定、全岩化学組成分析および岩石の帯磁率測定を実施した。これらの結果から、岩石の肉眼観察、硫黄含有量、帯磁率、溶出試験1時間後pH、含有S/Caモル比、重金属含有量などから成る新たな分別の基準とフローを確立することができた。
第5章では、実際のずり処分の状況を述べながら、上記の分別の判定基準とフローの妥当性を検証している。トンネル掘削完了までに採取した試料の分析、および一般型・管理型土捨場からの浸出水の水質分析により、設定した分別基準・フローが妥当であったことを多数の試験結果から実証した。また、火山岩・火砕岩に対する判定基準の追加、各判定項目の有効性についても述べた。
第6章では、結論として本研究の成果をまとめるとともに、鉱化変質岩を対象とした今後の長大トンネル施工に対する貴重な提言を行っている。
以上、環境汚染の原因となる鉱化変質岩が大量に分布する地域を通過するトンネル工事では初めて、トンネル掘削の進行を妨げることなく短時間でずりを評価し、確実に分別するフローを確立することができ、かつこれを膨大な分析結果に基づいて実証したことは、トンネル工学、環境工学に係わる土木工学技術の発展に大きく貢献する研究成果と言える。
また、研究業績調書に記載のとおり、学位論文に関連する査読付論文も既に計5編(内、英文2編)発表しており、博士(工学)の学位を授与するに足りるものと認める。
最終試験の結果の要旨
論文を中心とした科目試験
学位論文の内容および関連するトンネル工学、環境工学、地盤工学、地質学および土木工学一般について、学位論文発表会による最終試験ならびに口頭試問を行った結果、充分な学力があると確認した。
また、英語およびドイツ語に関しても、口頭による試問を行った結果、充分な学力があると確認した。
以上より、関連専門科目および外国語に関して充分な学力があると認められる。
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